いかに「アベノミクス」が役立たずであるか
古賀茂明×望月衣塑子が「独裁者」を斬る!①
■生活水準がネパール並に下がる!?
望月 こういうことになったのは、やはり企業の問題ですか?
古賀 そうですね。一つには、為替で円安になっていることがあります。円安というのは、日本のものがすべて海外から見ると安くなるということですよね。だからGDPも賃金も小さな額になるということです。
でも、実は、それと企業の競争力の話が密接に絡んでいるんですよ。日本の企業はずっとコスト競争でやってきました。一方、アメリカは、アマゾン、グーグル、アップルなど、自分が独走できる新しい世界を切り開いてきました。ある意味、競争のない状態を作ることで、働いている人の給料を高くすることを可能にしてきたのです。ドイツでは、同じ自動車をつくるのでも、ベンツ、BMW、アウディと高級車に力を入れた。ベンツがつくると小型車もべらぼうに高い。世界はそういう競争をしているのに、日本はずっといままでと同じようなモノを、同じ手法でやるわけですから、トヨタがつくるとレクサスでもやっぱり割安となる。そういう競争では、どんどん途上国に追い上げられる。新しいビジネスをつくる能力を持った経営者がまったくいないので、結局コストを下げて競争するしかない。そうすると、「中国や韓国が追い上げてくるから、給料を下げよう」となり、派遣や請負を使い、努力して下げる。それで一息ついても、すぐまた追いつかれる。これ以上、下げられず、どうしようもなくなり円安にした。ドル換算で見たら、日本の労働者の給料は一気に三割以上安くなったわけです。それで大企業の競争力は何とか確実に上がった。
でも、それをやっても、まだ、どんどん追いかけられる……。これを続けていくと、結局、日本人の生活水準をネパールぐらいにまで下げていかないと競争できないということになるわけです。日本はその道を一所懸命進んでいるのです。